全国放送の番組出演や全国各地での講演活動でカラフル人参の魅力を伝える鈴盛農園 代表 鈴木によるカラフル人参にまつわるコラムです。
皆様はにんじんの種を見たことがありますでしょうか?
にんじんの花を見たことがありますでしょうか?
毎日の食卓に並び身近な存在である人参ですが、じつはその種や花は見たことがないという方が多いのではないかと思います。
人参の種は、わずか数ミリの吹けば飛ぶような小さな種です。
▲ちいさなちいさな種。
そんな小さな種がおよそ半年の時間をかけ、太陽の光を浴び、光合成を行い、畑からの栄養素を蓄え、自然の恵みである雨を浴び、大きく育っていきます。
その中で私たち農業者ができることは人参が本来持っている「成長するチカラ」を発揮しやすい環境を整えることです。
もしかしたら子育てと似ているのかもしれません。
鈴盛農園のカラフル人参も畑で自由に育っていますので、中にはまるでダイコンのように大きく育つ人参もあれば、隣のにんじんに遠慮したのか指先ほどのサイズのミニ人参もとれます。
野菜は工業製品のようにまったく同じでなく、それぞれに個性があります。
人間においてはみんな違ってみんないいとはよく言いますが、現代の青果物は物流の利便性が重要視され、同じ長さ、同じ重さの規格が統一しやすい品種が好まれます。
しかし鈴盛農園のカラフルにんじんは自由奔放に育てているので規格がありません。
一つの箱の中には大きな人参もあれば小さな人参も入っています。
「こんな可愛いにんじんもあるんだね」
「こっちのにんじんは大きいね~」
そんな会話と共に人参の個性を楽しんでいただけますと幸いです。
鈴盛農園のカラフル人参は、完全数量限定・期間限定の野菜です。
出荷量・出荷期間は限られています。
全国放送のテレビ番組で取り上げていただく事もあり、その時にはなるべく多くのお客様にお届けしたいと思いますがあくまでも数量限定です。
また、海外の高級スーパーなどに農産物を卸している台湾の商社の会長が直々に私たちの農園を訪ねてくださり、あなたたちのカラフル人参を全て私たちに売ってほしい!」と言う嬉しいお言葉をいただいたこともありますが、私たちは決められた出荷量の中での栽培をしているため数量限定でのお取引をお願いしました。
この拡大路線の現代農業の中で、そんな商売の仕方ではもったいないと言われることも多々あります。
なぜ大量生産しないか?
私たちのカラフル人参は’器’で例えるのなら「職人による手作りの伝統工芸の器」でありたいと思っています。
確かに工業製品のプラスチックの器であれば大量生産、大量消費が可能です。
農業でも同じで、大規模化・機械化で生産量を増やすことができます。
どちらが良い悪いではなく、それぞれ一長一短あり、どちらも必要だと思います。
そして、生産者としてどちらを選ぶかもまた自由だと思いますが、
私たちは「創り手の目が行き届き、手が入り、自信と責任を持ってお届けできる」そんな農業をしていく道を選びました。
限られた収穫量にはなりますが、私たちは万人向けでなく、私たちのカラフル人参を選んでいただける方たちのためだけに想いを込めて創っています。
種をまいた後は芽が出るまで毎日3時間以上の水やりを怠らず、発芽後は手で草を取り、人参と人参の間隔が色ごとに定めた間隔になるようにすべての畑を手作業で間引きをするという気の遠くなるような作業。
畑に入り葉っぱの様子を見ながら饗庭塩や乳酸菌などの有用微生物入りの特製液肥を手作業で散布する農園独自の塩農法。
もちろん、収穫は人参の様子を見ながら、注文量にあわせた量だけ一本一本人間の手で収穫(オーダーメイド収穫)していく事で鮮度を保つ。
機械化・省力化とは正反対の非効率な農業ですが、その取り組みを多くのお客様に評価していただき、今ではその希少性にも価値を感じていただけるようになりました。
簡単に手に入らない。そして、決して安くないプレミアムな価格。
だからこそ、食べてくださる皆様に特別な時間を感じていただけるのだと思います。
鈴盛農園では、「オレンジ・黄色・白・赤・紫・黒・ベージュ」の七色の人参を育てています。
現在 日本で栽培できるすべての色の人参を取り揃えております。
なぜ7つもの色の人参が創れるのか?
当然ですが着色料を使っているわけではありません。
決して遺伝子組み換えを行っているわけでもありません。
世界各地で育てられている様々な色をもつ品種の人参を栽培しているのです。
カラフル人参に関してあっ!と驚くお話があります。
ここ最近、少しずつ飲食店でも見る機会が増え、スーパーや産直施設などの店頭でも見かけるようになったカラフル人参。
流行りの西洋野菜のように取り上げられる機会も増えました。
しかし!実は江戸時代までの日本ではオレンジ色の人参よりも白や赤、紫などのカラフルな人参の方が多く栽培されていたんです!
栽培が難しく、形が揃いにくいカラフルな人参は、育てやすく揃いがいい西洋人参(オレンジ色のいわゆるニンジン)に淘汰されていき、京都の金時人参(赤人参)や沖縄の島人参(黄人参)などのように一部の地域のみで作られる野菜になっていきました。
すっかり西洋野菜・海外品種のイメージの強くなったカラフル人参ですが、ある意味では日本の伝統的な野菜だったのかもしれません。
今から400年以上も前、当時の食文化の中でカラフル人参がどんな料理になっていたかとても興味があります。
・・・と、いう事はですよ、安土桃山時代、かの有名な武将「織田信長」の食卓はカラフル人参を使った料理で彩られていたのかもしれません!浪漫を感じますね。
かつての日本の食卓を華やかにした色とりどりの人参文化、復活に向けて鈴盛農園も力を入れていきます。
カラフル人参の色の違いは栄養素である野菜の色素の違いです。
オレンジ色の人参には「βカロテン」が多く含まれ、
赤い人参には「リコピン」黄色には「キサントフィル」が多く含まれます。
黒・紫には「ポリフェノール・アントシアニン」など、色によって様々な栄養があり、
同じ人参でありながらたくさんの栄養が摂取できます。
定期的に食べていただければ野菜から摂れる栄養素がサプリメントがわりになるかもしれません。
重要なことですが忘れがちなこと、 人間の体は食べたものでできています。
しかし、カラフル人参の存在意義として「毎日の食卓に並ぶような野菜ではないだろうな」という生産者らしからぬ思いもあります。
…それでいいんです。オレンジ色の人参がケ(日常)の食材であり、カラフル人参はハレ(お祭り)の日の食材だと思っています。
誕生日などのおめでたい日、クリスマスやハロウィンなどのパーティーの日、お正月など人が集まる時、そんな時の食卓を彩る野菜でありたいのです。
驚きと笑顔に寄り添えるような食材になれたら生産者冥利につきますね。
そして、一度食べてくださった方が大切な人へのプレゼント、ギフトとして贈りものに使っていただく事も増えています。
幸せを感じてもらえる、贈り物にしていただける、鈴盛農園のしあわせのカラフルにんじんは、本当に幸せ者です。
カラフル人参はどんな調理方法が良いかという事は非常に良く聞かれます。
確かに7色もの色の人参を前にすると戸惑うかもしれません。
しかし、人参は人参です。
いつも何気なく調理しているオレンジ色の人参と同じように使っていただいてかまいません。
ただ、せっかくたくさんの色がありますからその色を活かすために、
シチューであればビーフシチューではなくホワイトシチューにすると良いかもしれません。
また、黒い人参は煮物にすると色が出て黒っぽい料理になってしまいますが、
それを逆手にとってカレーに使えば濃い色だけでなくコク深くなりますし、
アイデア次第で沢山の使いかたができる食材です。
上記に書いたようにカラフル人参は新しい食材でもあり、実は日本の伝統的な野菜でもあります。
新しい料理・利用方法の開発もできるでしょうし、歴史に学べば温故知新で良い調理方法が見つかるかもしれません。
鈴盛農園のカラフル人参はミシュランの星付料亭・レストランなど多くの料理店でもご利用いただいております。
一般的には利用方法の難しいカラフル人参をそれぞれの特徴を活かして美味しく・美しく素敵な料理に昇華させて提供している飲食店様はそれだけで食文化の発展活動をしていると言っても過言ではないのかもしれません。
私自身も、鈴盛農園のカラフル人参を使っていただいている料理店で食事をさせていただく事も多いですが焼く・蒸す・干す・生で・ピューレで・飾りで・スイーツで…と、本当に多くの使い方をしてくださいます。
その度にカラフル人参にはまだまだ多くの可能性を秘めているのを実感しますし、生産者としてできる事が多くある事も感じます。
料理人や、料理好きの方を刺激するようなカラフルな人参を創り続けます。